ビル・ゲイツも推薦する、近代物流のイノベーションを記録した『コンテナ物語』が面白すぎた。

最近、読んだ本で、非常に面白かった本のひとつが、マルク・レビンソン著『コンテナ物語』です。

ビル・ゲイツが、自身のサイト、gatesnotesで、2013年のベストブックの一冊として、勧めています。

You might think you don’t want to read a whole book about shipping containers. And Levinson is pretty self-aware about what an unusual topic he chose. But he makes a good case that the move to containerized shipping had an enormous impact on the global economy and changed the way the world does business. And he turns it into a very readable narrative. I won’t look at a cargo ship in quite the same way again.

ゲイツ氏の言葉をそのまま引用しますと、無機質な箱であるコンテナの本を読むなんて、退屈だと思うかもしれません。
著者のレビンソン自身も、そのことについては言及してますが、コンテナは、この本を読む以前は想像出来なかったほどに、グローバル化に影響を与えたイノベーションであることを本の中で示しています。
ゲイツ氏は、この本を読んだあとでは、それまでと同じ見方では、コンテナを見ることが出来なくなった、とコメントしています。

近代のグローバル化は、コンテナなしではあり得なかった。

現代では、あらゆる製品や製造部品、食料までが、国を跨いで行き来して、サプライチェーンを構築しています。
これは極めて高効率で、安価な物流システムが存在している上で成り立っていますが、そのコアが、コンテナです。
著書では、貨物がいっぱいに詰まった三五トン・コンテナ一個の運賃は、ファーストクラスの航空券一枚よりも安く、もう一つ特筆すべき点は、この間にコンテナの中身に誰も手も触れないということ、輸送中、コンテナの扉が途中で開けられることさえないことを、革新的な点として、指摘しています。

実際、今では、自分のような個人でも、中国の卸市場からコンテナを手配し、日本で荷揚げされるまで、荷物を盗まれる心配をすることもなく、物を出荷できるようになっています。

コンテナが普及する1970年以前、物の輸送費は、今より格段に高く、アメリカの輸出総額全体の10パーセント以上を占めていたといいます。

今では常識になったグローバリズムの大原則として、生産地も人件費も、高い国から安い国へ移行するという原則も、コンテナが登場し、物の輸送費を押し下げるまでは、常識ではありませんでした。
他国で、どれだけ少しくらい安い人件費で向上を作ることが出来ても、輸送費が高くついてしまうのであれば、工場を移転するメリットはありませんので、コンテナがなければ、グローバル化は起こらなかったともいえます。

ひとつの巨大イノベーションを追体験する物語

そう考えると、インターネットばかりがグローバル化を可能にしたイノベーションであると注目されがちですが、それ以前に、コンテナがもっと注目されるべきイノベーションであり、そして、そのイノベーションは既に、黎明期・期待のピーク期・普及期・安定期を経験しています。

この書籍が大変面白いのは、コンテナというイノベーションは、現代を生きる僕たちからすると、あって当たり前のものではあるのですが、当時、このコンテナが普及するかどうかについて、多くの人が未来を見誤っているという、産業史の一面を明確に切り取っているということです。

また、コンテナの導入は、港で、多くの小分けにされた荷物を荷揚げをする多くの作業員の仕事もリプレイスしていますが、当時、この荷揚げする大量の人員と、その周辺にある産業がなくなるなんて多くの人は、予測しなかっただろうし、信じたくない人もいたであろうことは想像がつきます。
しかし、無情にも、それらの仕事はなくなり、港自体も衰退したものと、コンテナ化に乗じ、発展したものに二分されました。

これは21世紀における人工知能や、自動運転車など、これから起きるイノベーションを予測するにしても、大いに参考になるのではと思います。

コンテナが、アメリカ東海岸で荷揚げされたのは1956年で、その後、国際物流でコンテナが普及したといえるのは、1970年台後半だというのだから、はじめてそのイノベーションが出てきてから、その間は、四半世紀たっています。

そして現代においては、別の著書、『移動の未来』を書いたエドワード・ヒュームズ氏によると、iPhone本体ではなく、部品一つ一つについて見てみると、購入してから最初の電話やメールをするまえに、実はすでに地球8周分の輸送が行われている。「もっと驚くのは、この膨大な距離の輸送が、製造の効率を上げ、コストを下げるために行われているということである」とのことで、ここまで、コンテナ登場から半世紀で、世界は様変わりしました。

更に興味深いのは、現代のコンテナ開運業界の大手は、比較的参入が遅かった企業ばかりであるということです。
マースクは1973年からの参入で、エバーグリーンも設立は1968年です。
1956年からコンテナに目をつけ、その普及に多大な貢献をしたファーストペンギンでもある、シーランドという会社は、今は存在しません。

シーランドを経営したマルコム・マクリーンは、初期から、コンテナが革命的であると確信しながらも、海運業秋で成功の地位を獲得できなかったということと、一連の産業史から学ぶことは多くあります。
これらの産業史を綿密な資料をよみとき、取材のうえで構成されており、おすすめできる一冊です。

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