日本人の安すぎる給与は、解雇をしやすくすると上がります。アメリカ企業と日本企業での、正社員という雇用形態の違い。

最近、たびたび、日本の物価・賃金が先進国としては、安すぎるということが話題にあがります。

“日本はここ20数年、企業などが国内で生み出す付加価値(売上高-仕入れ)の合計である名目GDPが全く伸びず、物価などが諸外国に比べてとても安いのです。
例えば、500円くらいでも日本ではそこそこ満足できる昼ご飯を食べられますが、欧米で5ドルや5ユーロ程度でまともな昼ご飯を食べられるということはまずありません。私は、今日夜からオーストラリアのシドニーに出張ですが、シドニーでは普通のレストランで昼ご飯を食べても2000円程度はします。まさに「Japan is cheap」です。”
参考記事:「Japan is cheap」日本人の給料が破格に安いという認識が企業にはない

Japan is Cheapというけど、どれくらい安いのか。

実際に、日本の賃金は安すすぎます。
これだけデフレ化した先進国も珍しいでしょう。

今、世界で最も高い場所の1つが、シリコンバレーだと思います。

僕は、シリコンバレーに一度、足を運んだ時、
・年収1000万円では平均以下
・タクシー運転手でも600万円は稼ぐ
・エンジニアとみなされるのは、年収2000万円から

など、先進国で最も賃金が安い日本からでは、信じられない話を沢山聞きました。
レストランも宿泊先も、何から何まで高くて、個人的には、たまに足を運ぶぶんには良いですが、住む場所の候補地には、まずならない場所のひとつです。

けど、シリコンバレーほどではないにしろ、それが先進国の都市では、普通のことなのです。

これに対し、解雇をしやすくなると、全体としては給与があがるというオピニオンがあったようですが、その現実を最もよく表した環境が、シリコンバレーでもあります。

解雇をしやすくなると、給与はあがる。Employment-at-willという雇用契約。

これだけ給与が高騰しているシリコンバレーの雇用契約は、Employment-at-willという考え方が、基本です。

Employment-at-willとは、
「あなたを雇用するけれど、会社は、あなたの意思に関係なく、会社の都合で(at wil)、あなたを解雇することが出来る。」
という契約です。

もう一度書きます。あなたの意思に関係なく、会社の都合で、自由に解雇ができます。
これが、嫌だと思っても、入社にあたって、契約書にサインするのであれば、この契約は、基本的に飲むしかありません。

恐らく、シリコンバレーに限らず、Employment-at-willというのは、他の地域の米国企業でもある話だと思うのですが、古くからある企業だと、労働組合が、ある程度発言権を持っていて、Employment-at-willは、シリコンバレーの若い企業ほど機能していないのではないかと思います。
念の為に注意書きしておくと、米国の連邦法では、人種・性別などを都合にして、雇用を解消することは出来ないので、そういった理由は含まれません。
これを利用に解雇を試みると、裁判で会社側は、非常に不利です。

ここで、「会社の都合で、いつでも解雇出来る。」ということに関して、考えられるケースをざっと考えてみると、

①雇用したポジションで期待したパフォーマンスが出なかった場合。
②パフォーマンスは良かったとしても、もっとパフォーマンスが良さそうな人材が、そのポジションにアプライした場合
③会社として、該当する事業を撤退するから、そのポジションが不要になる場合

少し考えただけでも、こんなところが思い浮かびます。
②なんて、パフォーマンスが良かったとしても、解雇対象にするというのだから、日本式の雇用システムに馴染んでいる人は、とても不条理に感じるかも知れません。

ですが、雇用主の立場で考えると、②も含め、いずれも事業を運転させるにあたっては、非常に合理的です。

ここまで、Employment-at-willを見ていきますと、日本でいうと、契約社員や派遣社員と変わらない、という声が聞こえてきそうです。
ある意味、それは間違っていなくて、全員が契約社員みたいなものです。

日本では、正社員と契約社員(派遣社員)という、分け方が明確にされ、「正社員にならなくてはいけない。」という空気が当たり前にあるのは、本当に残念だと思います。

正社員と契約社員の明確な違いは、保険と福利厚生の違いくらいだと、シリコンバレーで働くインド人から伺ったことがあります。

日本の雇用がおかしくなってしまったのは、正社員の雇用が、過度に守られてしまって、正社員のなかには、会社にしがみつくことを本業にする人まで現れてしまっていることでしょう。

解雇が出来るようになるということは、多くの場合、その分、より良い新しい人材を補充することでもあり、それは企業としての競争力を高めます。
企業としての競争力が高まるということは、売上をあげ、利益を出すことであって、利益を出せば、良いオファーで良い人材を雇用出来ます。

けど、こういった環境では、おとなりにある企業でも、同じロジックで良いオファーで、良い人材を、ヘッドハンティングをしている場合が多いです。
そうしたら、給与の釣り上げ競争になって、更に給与水準をあげることになります。

一見、雇用される側にとって、とても不利な契約に感じますが、労働市場の流動性があがり、実際は、会社から解雇通知が来る前に、他社からヘッドハンティングされ、自分から退職するケースも非常に多いと言います。

高スキル職以外も給与底上げされるだとうし、競争から逃げる選択肢だってあります。

このロジックで、給与が上昇するのは、高スキル職だけではなく、全体の産業が、一定の給与底上げがされるはずです。

まず、一番初めに、影響が出るのは、高スキル層の所得ですが、彼らの所得があがれば、彼らが消費するレストラン・エンターテイメントなどにお金がまわり、それらに従事する人の所得も上がります。(今後、自動化によって、レストランウェイターや、コンビニ店員の職は、削減されるでしょうが、それは、また別の話です。)

これが、シリコンバレーや都市国家で、起こっていることです。

日本の給与が、先進国で最も安い水準なのは、正社員を解雇出来るようにすれば、一定の解消はすると思います。
結果、より競争社会になることは間違いなく、その競争の中で引きずり落とされる人も多く出てくるはずです。
ですが、そのときは、東京を離れてゆっくり暮らしたり、一時的に生活保護を受けたり、生活費の安い国(日本人が過ごしやすいのはタイやカンボジア、アフリカの国でも良いでしょう)に移住したり、色々な方法があるのが、今の時代だと思います。

僕は、そんな競争社会になる東京で戦える自信はありませんが、日本全体として、経済力を高めるには、正社員を解雇できるように、労働基準法を改正するのは、急務でしょう。

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