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寄稿レポート:「アリババグループ」のブロックチェーン活用状況について概観する

d10n Labでは、【寄稿レポート:「アリババグループ」のブロックチェーン活用状況について概観する】を配信しました。

Meika Miyamoto(Twitter:https://twitter.com/akiet97)さんの寄稿レポートです。

これまでも数回に渡って、中国ファンドや取引所の実態について、中国語の情報源を駆使して密度の濃いレポートを寄稿していただいています。

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今回のレポートでは、中国の既存プレイヤーのブロックチェーンの取組の代表例として語られることの多いAlibaba Groupの全体像、どれくらい研究開発が進んでいるのか、なぜブロックチェーンに力を入れるのか、クリプトプレイヤーとの関係などに着目して考察しています。

 

事業内容

沿革

Alibaba Groupは1999年にジャック・マー(Jack Ma,中国語名:马云)によって創立されました。当時は後述のアリババドットコムと呼ばれるB2Bマーケットプレイスのみのサービスでしたが、少しずつオンライン決済やECサイト、クラウド事業、物流といった様々な領域に進出しました。「Alibaba」の名前を聞くとしばしば中国最大のオンライン・マーケットプレイスを想起しますが、Alibaba GroupにはAlibaba以外にも様々な事業が存在し、それぞれが個別の会社としてAlibaba Groupを構成しています。中国版GAFAのような立ち位置で、中国人の日常的なサービスを支配しているイメージです。
アリババはインターネットサービスの中国国内での普及に伴い、2018年上半期の決算においても大幅に収益を伸ばしています。総収入は122億米ドル、営業利益は12億米ドル、 フリーキャッシュフローは40米ドルで、中国国内で騰訊(中国版LINEともいわれる「Wechat」を提供している企業)に続き、2位の時価総額を記録しています。
世界時価総額においても、常に時価総額10位以内には入っており、米国 FacebookやGoogleと抜きつ抜かれつの状態であることを考えると、いかに巨大な企業であるかが伺い知れます。

Jack Ma

Alibaba Groupの創設者として知られているのがジャック・マーです。彼は幼少期から落ちこぼれで、特に数学を苦手としていました。しかし英語だけは非常に流暢に話せ、外国人旅行者のガイドのボランティアを自ら買って出ていたことで有名です。彼は持ち前の英語力で杭州師範学院外国語英語科に進学、卒業後は大学で教鞭をとっていました。その後米国でインターネットと出会ったのを機に中国国内でソーシャルネットワーキングサイトを立ち上げ、次第に中小企業どうしを繋げるプラットフォームとしてのアリババになっていきました。近年は会長職として経営に対して実質的な権力を持っていましたが、2018年9月10日、教育などの慈善事業に専念するためとして会長職からの引退を表明しました。
彼はブロックチェーンに非常に強い関心を寄せており、後述するように彼の意思決定が事実上アリババの経営判断を左右していたことは、アリババがブロックチェーンに投資する大きな理由となっています。

アリババが展開するサービス一覧はこちらになります。今回はブロックチェーンに力を入れている企業に絞って考察します。

Alibaba/1688.com

グループの名前を冠したサービスAlibabaはB2Bビジネスにおいて、プロダクトを売りたい企業と仕入れたい企業をマッチングさせるためのマーケットプレイスです。中国国内向けサービスではAlibabaではなく「1688.com」と言う名前で展開されています。
英語版:https://www.alibaba.com/
中国国内向け:https://www.1688.com/

従来商社を介していた企業同士のマッチングをオンライン上で実行することができるようになったため、中国国内のみならず世界中の中国と取引したい企業によって利用されています。

淘宝網 (Taobao.com)

中国版Amazonとも言えるC2CのECサイトです。後述する天猫と合わせると中国EC市場の80%のシェアを誇ります。メルカリのように顧客同士が様々な商品を取引することが可能です。「Taobao で見つからない宝物はなく、売れない宝物もない」と言われるほど膨大な商品が日々取引されています。

天猫

Taobao と合わせて中国の二大ECサイトとして位置付けられている、B2CのECサイトです。Taobao が個人間取引に限定されたショッピングサイトだったのに対して天猫は企業がインターネット上に仮想商店を開設して消費者むけに商品の販売を行うことができます。

ブロックチェーンを利用した偽装商品の防止についてですが、越境輸入品のサプライチェーンの監視によって不正輸入や偽装品の輸入を防止し、エンドユーザーに真正な商品を保証するプロジェクトを実施しています。

構造および参加するバリデータは、
【食品の産地】ニュージーランド、オーストラリアなどで収穫した食品について追跡するためのタグを付ける(ニュージーランドとオーストラリア産の食品は中国人が好んで消費するため)。高級化粧品やカバンといったブランドについても、出荷の段階でタグをつける
【卸売】卸売で仲介する業者(数社)は仕入れた食品についているタグを読み取ることで、その商品が当該卸売店を経由したことを証明する。
【輸送】輸送にかかる交通機関は、輸送する食品についているタグを読み取ることで、その商品を輸送していることを証明する。税関も同様
【税関】保税倉庫の検査権駅番号や税関申告書の番号などの情報を記録する。
【天猫/ショッピングサイト】天猫に出品する企業はタグを通じて真正な製品であることを証明する。
そして天猫で買い物をしたユーザーは商品が到着したら商品に同梱されているQRコードを読み込むことで以上の情報が記載、証明されたデータベースにアクセスすることで食品の産地からの流れを追跡することが可能になります。

これらが考えられ、生産、流通、輸送、税関、品質検査などの全ての段階について台帳に確実に記録するためにGlobal Origin Traceability Prigramと銘打ち政府機関とも協力しています(中国標準化研究院連合)。

このように食品の産地から小売業に至るまで全てのステークホルダーとなる企業や公共機関が情報を同一台帳に記録していることをもって「ブロックチェーンを利用している」と言っているのですが、ここには少し課題も見受けられます。

まず台帳を共有するのは誰かということがはっきりしていません。誰でも参加可能なパブリックチェーンとは異なりコンソーシアムチェーンでは通常管理権限のあるバリデータがブロックの生成機能を有していますが、現実的に上記の全ての企業や公共機関が台帳に書き込める権限を有しているとは考えづらいです。となる場合、アリババ単一のプライベートチェーンか一部のステークホルダーのみのチェーンであるようにも思えますが、その場合パブリックチェーンと異なりデータベースが公開されていない以上本当に経由する全てのステークホルダーで改ざんされていない商品であることを証明する手段がありません。

またオラクルの問題も解決できていません。このような問題を抱えている以上、エンドユーザーにとっては本当に読み取った情報がブロックチェーンに記録されているものなのかを証明する手段がありません。単なる通常のデータベースの拡張と考えると高性能なトラフィック追跡機能であるように思えますが、コンソーシアムチェーンの「分散型で参加するコンピュータ全てが同一の台帳を保持している」と言う本質を没却している可能性はあるでしょう。

なお、デモ画像が公式に公開されています。
QRコードをスキャンすると製品の工場での検査結果、品質調査の結果などが表示され、経由した地域や国が表示されます。
https://zhuanlan.zhihu.com/p/32860195

【目次】
事業内容
沿革
Alibaba/1688.com
淘宝網 (Taobao.com)
天猫
Ant Financial
Ant Blockchain
Alibaba Cloud
Alibaba Cloud Blockchain Service
Ali Health
特許取得状況
ブロックチェーン関連の特許申請の具体例
アリババがブロックチェーンに投資する理由
経営判断の裁量をもつJack Maの方針
BASIC
Alibabaの仮想通貨に対する姿勢とブロックチェーン戦略
Alibaba coinを巡る騒動
まとめ

・・・・・

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