暗号通貨マーケット

寄稿レポート:An (Institutional) Investor’s Take on Cryptoassets 要約

本レポートは、村田雅志さんによる寄稿レポートです。
John Pfeffer氏による、「An (Institutional) Investor’s Take on Cryptoassets」という暗号通貨の評価算定についてについての論文の要約です。

John Pfeffer氏は、仮想通貨の投資価値を、

(1)ユーティリティ・プロトコル
(2)決済
(3)価値の貯蔵

の観点から考察する方法を紹介しています。

彼のポジションは、BTCに大きく強気、ETHに大きく弱気ですが、ETHのフェアバリューを算出する考え方や、なぜBTCの価格が将来大きく上昇が見込めるかの考え方が明確に説明されている論文です。

かなり面白いですし、海外のファンドマネージャーの間では、広く読まれている論文なので、是非目を通されることをお勧めします。

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目次
*筆者について
ユーティリティ・プロトコルの経済性と価値(The economics and valuation of utility protocols)
*マイニングがPOSに移行した場合の影響
*ETHのネットワーク価値(The Network Value of ETH)
*貨幣としての暗号資産(Cryptoassets as Money)
*補論:BTCの価格上昇ペースに関する考え方(仮訳)2017年12月9日

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筆者について

本論文の筆者であるJohn Pfeffer氏は、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院でMBAを取得、マッキンゼー&カンパニーでシニアエンゲージメントマネージャーを務めた後、フランスのIT企業グループやプライベートエクイティファームでの勤務を経て、現在はPfeffer Capitalのパートナーとして投資を行っている。

JohnPfeffer氏は、2018年4月に開催されたソーン・インベストメント・カンファレンスで、ビットコインは金の代替物の第一候補であるとして、ビットコイン価格が70万ドル(約7500万円)に達する可能性があると発言した。

ソーン・インベストメント・カンファレンスは、デービッド・アインホーン氏やビル・アックマン氏といった資産運用の著名人がそれぞれの投資アイディアを語る会合として知られ、年に一度ニューヨークで開かれている。

ユーティリティ・プロトコルの経済性と価値(The economics and valuation of utility protocols)

筆者は、Ethereumのような、ネットワークを持つバーチャルマシーンやDappsをまとめてユーティリティ・トークンと呼んでいる。

筆者は、ユーティリティ・プロトコル・トークン(以下、「UPT」とする)の本質的な役割は、計算資源(Computing Resources)の再配分に過ぎないと断定している。

そして、UPTを用いたネットワークの経済価値は、ネットワークを維持するための計算作業の総コスト(本論文ではPQと表記、いわゆるマイニングコストを指す)をUPTの流通速度(V)で除した金額(PQ/V)であるとし、1UPTあたりの価格はトークン発行総数(T)で除した金額(PQ/VT)であるとしている。これは、UPTを用いたネットワークの経済レント(いわゆるプレミアム)がゼロであるとみなしていることと同義である。

UPTのネットワーク経済価値=PQ/V
1UPTあたりの価格=PQ/VT
PQ=計算作業の総コスト
V=UPTの流通速度
T=トークン発行総数

(レビュワー注:)この方程式は古典派の貨幣数量説の基本的な考え方である「フィッシャーの交換方程式」を参考にしていると思われる。フィッシャーの交換方程式は、以下のように定義される。

MV=PQ
M=貨幣量
V=流通速度
P=物価
Q=取引量

MVは購買価格総額で、PQは販売価格総額であり、常に等しくなる。
この式を変換すると

M=PQ/V

となる。なお、PlaceholderパートナーのChris Burniskeが示したクリプトアセットの価値算出モデルにおける「内在価値」も、フィッシャーの交換方程式に基づいている。

次に筆者は、UPTを用いたネットワークにはデフレ圧力がかかりやすいとし、その理由として以下の点を指摘している。

・流通速度(V)は非常に大きくなる可能性がある
 (UPTが使われれば使われるほどVは大きくなる)
・プロセッサー、ストレージの価格下落(PQの低下)
・フォークによって、よりコストの低いUPTが出現する可能性

パブリック・ブロックチェーン技術から得られるメリットは、トークン所有者やマイナーではなく、ユーザーに付与されると筆者は主張する。そして、UPTへの投資は、持続的にリターンが得られるようなものではなく、大規模で、商品化された、完全競争下でのSaaSビジネスを運営するために使用される通貨の一部を所有することと同義であると主張している。

筆者は、人々がブロックチェーン・プロトコルがFacebookのような独占的ネットワーク効果を持っているかのように誤解しているとし、以下を指摘する。

・ブロックチェーン・プロトコルは、フォークによって、同一の性能を持った、よりコストの低い新しいネットワークを容易に生み出すことができる。フォークは、ユーザーの効用(Utility)を最大化するかもしれないが、トークン保有者の経済価値を抑制する。

・暗号資産の潜在的な価値を語る際に、人々はメトカーフの法則(ネットワーク通信の価値は、接続されているシステムのユーザ数(n)の二乗に比例する)を持ち出す。メトカーフの法則に基づくと、ネットワーク価値はθ・n(n-1)とされるが、我々はn(ユーザー数)だけでなく、定数であるθも考慮する必要がある。ウィキペディアは多数のコンテンツ投稿者とユーザーを有するが、ウィキペディアが生み出す利益は大きくない。つまりθが小さい。

・トークンが経済レント(プレミアム)を維持できるか否かは、ユーザーの利用動向ではなく、マイナーが置かれている競争条件による。非中央処理のプロトコルを維持するには、マイニングは競争市場である必要がある。仮にマイニングが特定のマイナーに依存するのであれば、そのプロトコルは非中央処理とは言いがたい。マイニングが競争市場に置かれると、トークン価格は究極的にはプロトコルを維持するコストに修練する。

・プロトコル内の潜在的なフォーク可能性によるマイナー間の競争だけでなく、プロトコル間の競争も激しい。例えばKikは、Ethereumは利用コストが高いという理由で別のプロトコルへ移った。

・脱物質化ネットワークビジネス(SNSやUberやAirBnBなど)を証券化したものの価値は、株式会社の企業価値に比べ、構造上小さいものとなるだろう。非中央集権プロトコルによるネットワークは、既存のビジネスや市場価値を破壊し、ユーザーの役に立つかもしれないが、投資家にとっては悪いことである。


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