暗号資産関連論文

寄稿レポート:暗号通貨の評価算定「Cryptoasset Valuations」を出来るだけわかりやすく解説

d10n Labでは、ゆりお(https://twitter.com/yurwo)さんによる寄稿レポート『Chris Burniskeの暗号通貨バリュエーション手法「Cryptoasset Valuations」を経済用語の解説も加えて出来るだけわかりやすく紹介します。』を配信しました。

暗号通貨の適切なバリュエーション(評価)方法を提案する有名な記事の1つとして、PlaceholderのパートナーであるChris Burniskeが2017年9月に発表した「Cryptoasset Valuations(https://medium.com/@cburniske/cryptoasset-valuations-ac83479ffca7)」があります。

発表から時間が経っており反論記事もいくつか出ていますが、暗号通貨評価の基礎となる考え方ですので、初見の方に向けて出来るだけわかりやすいように解説を試みました。

Chrisが初期に打ち出したビットコイン価値説明モデル

2015年9月に、ビットコインに投資をするARK Invest社のファンドマネージャーとなったChrisは、ビットコインの資産価値を評価する必要性に迫られ、シンプルな価値予測モデルを作りました。

その理論には不備があったと後に認めているものの、重要な概念は提示できていると振り返っています。
Chrisは、「TAM」「市場浸透率」「velocity」「コイン残高」の概念を使ってビットコインの現在価値と将来価値を説明しようと試みました。

手順はごくシンプルなもので、

  • ビットコインが属する市場規模を計算する
  • そこで将来何%のシェアを取れるかを算出する
  • 1単位あたりに換算する

という3ステップを踏んでいます。

まずは理論に使用されている用語の説明をします。

・TAM(Total Addressable Market)
市場における製品やサービスの総需要(最大の利益機会)のことです。
TAMは、新規ビジネスがどの程度スケールするポテンシャルを持っているのかを想定するのに利用されます。
通常、TAM = エンドユーザーの最大人数 x サービス・製品に支払う年間金額 といったような数式で表されます。

・市場浸透率
特定領域において、対象サービスがどれだけ市場を獲得できているかを表す値です。
通常、市場浸透率 = 製品数または顧客数 ÷ ターゲット数 × 100 といった数式で表されます。

・コイン残高
発行済未使用コインのことです。

・velocity
velocityはフィッシャーの交換方程式において以下の式で求められるとされています。
これは、古典的な貨幣数量説において、貨幣量と物価の関係を表す式です。

V=(P×T)/ M
V = 貨幣の流通速度
P = 物価
T = 取引総量
M = 貨幣量

流通速度(Velocity)とは

流通速度と言っても、ボールを投げる速度や車の走行速度などとは違って、貨幣が経済圏の中で人(財布)から人(財布)へと渡る平均的な回数(貨幣の持ち主が変わる頻度)のことを指します。
例えば、ある経済圏では全ての生産をカツ丼につぎ込んでいるとします。
カツ丼は1杯500円で、1年間に10,000杯のカツ丼が取引されるとします。

貨幣量が10万円あるとすると、貨幣の流通速度は、

V=(P×T)/ M
V =(500 x 10,000)/ 100,000 = 50

となりますので、年間500万円(500円 x 10,000杯)をカツ丼に使う経済圏で人々が10万円分の貨幣量で消費をするには、貨幣の持ち主を50回変更する必要があることになります。

実際の経済ではvelocityは通常ほぼ一定で、短い期間に大きく変化することはありません。
また貨幣量が多ければ多いほど、velocityが遅くても実現できる経済規模は大きくなります。

Chrisは、TAMを算出するにあたり、ビットコインの市場=送金市場(主に発展途上国への送金)と仮定しました。

2014年の発展途上国への送金市場のTAMは、世界銀行の統計によると4,360億ドルでした。
ビットコインが送金市場の10%のシェアを取れる(市場浸透率が10%)とすると、4,360億ドルx10%=436億ドルとなります。

velocityを1.5と仮定すると、ビットコインの時価総額(M)はいくらになるでしょうか?

V =(P×T)/ M の両辺に M/Vをかけて M =(P×T)/ Vと変形し、(PxT)=43.6、V=1.5を代入します。
M = 43.6ビリオンドル / 1.5
M = 約30ビリオンドル

これでビットコインが送金市場の10%を占めた場合の予測時価総額は約300億ドルと求められました。

レポート発表時(2015年)で1470万のコインが発行済未使用コイン(コイン残高)としてありましたので、300億ドルを1470万コインで除すると、
300億ドル / 1470万コイン = 2,000ドル
となり、1ビットコインあたり2,000ドルとなります。

これは、2015年8月1日時点の1ビットコインあたりの価格280ドルの約7倍です。
この評価は、送金以外の市場でのビットコインの評価の上に積み重ねることが可能です。

Chrisはこのビットコイン価値評価モデルについて、以下のような不備があったことを認めています。

  • 将来価値を予測するのに現在価値をそのまま設定するのは不適切
  • 将来のコイン使用量に現在のコイン使用量をそのまま設定するのは不適切
  • velocityが1.5というのは低すぎた

2年後の2017年、Chrisは精度を高めた新しい価値評価モデルを作りました。
次項からそれを説明していきます。

暗号通貨評価の背景にある理論

暗号通貨の評価にあたってまず背景の理論を確認しましょう。
暗号通貨は企業ではないため、キャッシュフローがありません。
そのため、一般的に企業を評価する際に使用するDCF(discounted cash flow/割引キャッシュフロー)分析をそのまま暗号通貨の評価に使用するのは不適切です。

そこでChrisは、DCFに似た構造をもつ新しいモデルを作りました。
このモデルは、収益や金利や利益ではなく、交換方程式を用いて各年における「現在の実用価値(current utility value)」を導きだします。
その後、予測された将来実用価値を現在まで割り引いて合理的な市場価格を求めます。

(以降、d10n Labで配信したレポート全文では、詳細を解説しています)

・・・・・

目次
Chrisが初期に打ち出したビットコイン価値説明モデル
暗号通貨評価の背景にある理論
新しいトークン評価モデル~帯域幅トークン・INETを評価してみる~
A.INETのトークン流通量を算出する
B.INETのエコノミー価値を算出する
B-1.INETのGDP(PQ)を算出する
B-2.INETのVelocity(V)を設定する
B-3.INETのマネタリーベース(M:資産サイズ)を算出する
C.適応曲線を設定する
D.INETの1トークンあたりの価値を現在価値に割り引く
所感

・・・・・

続きは、d10n Labコミュニティに入会してお読みください。

一度ご入会して頂くとd10n Labの過去の650本以上のレポートやコラムが全て閲覧できる他、定期的に行なっている収録イベントの過去ログ、不定期で行っているイベントなどにアクセスできます。

暗号通貨とブロックチェーンは、インターネット以来の大きいイノベーションであり、私たちの世代にとって最も大きいインパクトを与えパラダイムシフトを起こすと考えています。

d10n Lab(ディーテンエヌラボ)は、未来を思考する離合集散的なリサーチコミュニティです。

暗号通貨のこと全般・投資リテラシー・移住など多様なトピックを扱うほか、嗜好が近いメンバーとも出会える場を目指しています。読みたいレポートをリクエストしたり、リサーチャーがマネタイズできるリサーチプログラムもあります。