ビットコイン

ビットコインが、他のパブリックブロックチェーンと比べて何が凄くて、何が凄くないかを考える

ビットコインが、他のパブリックブロックチェーンと比べて何が凄くて、何が凄くないかを考える。

10月31日で、ビットコインのホワイトペーパーが公開をされてから10年が経ち、様々なメディアでは10年を振り返る特集記事を出しています。

d10n labでもこのタイミングに乗っかり、ビットコインに関連するレポートとして、ビットコインが、他のパブリックブロックチェーンと比べて何が凄くて、何が凄くないかを考えてみようと思います。

ビットコインが最も分散的であり、将来的に、その他のブロックチェーンの役割の多くをビットコインが代替するという将来予想をする人も少なくありません。
ビットコインマキシマリストと呼ばれるビットコインサポーターの一部では、Ethereumやその他のパブリックブロックチェーン・スマートコントラクトプラットフォームがブロックチェーンとしての分散性などを持たないとして、将来的に存在感をなくすと主張をするグループもいます。
特に、最近は様々なパブリックプロトコルが登場しており、各プロトコルは、非中央集権性・ガバナンス・ディストリビューションの面で多くの議論がされますが、この点についてビットコインがどうであったかを今一度考えます。

ビットコインのガバナンスについて

現在、多く登場している新規のパブリックプロトコルの多くは、オンチェーンガバナンスを採用しようとしています。

オンチェーンガバナンスとは、平たく言えば、ネットワーク内でバリデータは◯◯の権限を持ち、トークンホルダーは◯◯の投票権限を持ち、◯◯の条件でコードがアップデートされる、ということがコードによって規定されていることを指します。

これについては下記の記事が詳しいです。

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これに対して、ビットコインは、オフチェーンガバナンスと呼ばれます。

ビットコインのブロックチェーン・プロトコル自体には、基本的にはコードをどのようにすればアップデートさせるかというガバナンスモデルは組み込まれていません。

ビットコインやEthereumのアップデートは、放っておけば勝手にシステムがアップデートされる、という類のものではなく、マイナーやフルノードのオペレーターによる自発的なアップデートで行われます。

つまり互換性があるノードを各々がアップデートしていきます。
採用をするコードがどのように評価されるかについても、ビットコインの場合、BIPという形式でブロックチェーンの外でwebで提案され、そのあとにGitHubでコードが書かれます。
それがビットコインのノードソフトウェアであるBitcoin Coreの新しいアップデートとしてリリースされ、各フルノードオペレーターやマイナーがアップデートしていくことが大まかなプロセスです。

Ethereumの場合も、ビットコインよりクライアントの種類が少し多いですが、このプロセスは変わりありません。
一方、この方式ですと、コードによるアップデートではないため、クリティカルなソフトウェアアップデートが提案されたときに、それを採用するかどうかの決定権を誰が持つのか、非常に揉めることがあります。

過去の具体的事例としては、ビットコインのSegWitのアクティベートであり、このアップデートには2年以上の時間がかかり、賛同できないグループは、ビットコインキャッシュという別のチェーンにハードフォークする形で、この論争は収束しました。
ビットコインのネットワークには、マイナー・ユーザー・開発者のステークホルダーが参加していますが、この誰もが究極的にはプロトコル方向性を決定する絶対権限を持ちません。
また、ビットコインの開発にすでにサトシナカモトは関わっておらず、EthereumにおけるVitalik Buterin、ZcashにおけるZooko Wilcox、EOSにおけるDarryl Larimerのような明確な旗振り役も存在しないため、クリティカルな合意には時間がかかります。
ですが、時間がかかりながらも、誰もが究極的な決定権を持っていないということが、ビットコインの非中央集権性だともいえます。

UASFとは何であったか、ビットコインの内紛はどのように終結したかのおさらい

ビットコインのUASFについてのおさらいをします。

ここ1年くらいで暗号通貨に関心を持ち始めた人は認知していないかもしれないですが、SegWitのアクティベートを巡って、ビットコインのスモールブロック派、ビッグブロック派で開発方針があわず、長い論争をしていました。

SegWitの実装がなぜこのような方針に深く関わるかについては、 ビットコインのTransaction Malleabilityを解決する技術で、このSegWitのアップデートがなければ、その後のLightning Networkやサイドチェーンを実装できるかに関わり、オンチェーンでスケールするか、オフチェーンでトランザクション性能をあげるか決定的なアップデートになるからです。
この論争がどのように終息をしたかをおさらいすることはビットコインのガバナンスがどのように動いているか、ビットコインの非中央集権性とはなにか、ガバナンスについて考えるのに、最も優れた事例です。
なるべく短めに解説をするために省略をしている部分もありますが、下記のようになります。

①SegWit含むBitcoin Core0.13.1リリース(2016年10月)

2015年から議論されていましたが、ついに2016年10月、SegWitへのソフトフォークアクティベートを含むBitcoin Core0.13.1がリリースされます。
リリース=アクティベーションではないことに注意する必要があります。

ビットコインではversionbitsと呼ばれるマイナーによるシグナルでの投票方式を用いて、直近2016ブロックの95%が表明されるとロック期間に入り、さらに2016ブロックを経てアクティベーションが行われるというものでした。
ここで認識しておくべきは、このソフトウェアを書いたのはビットコインのコア開発者たちです。
各ノードオペレーターやマイナーはこの新しいバージョンのソフトウェアをダウンロードし、投票シグナルを送れます。

②合意できず(2016年末ー)
しかし、95%のシグナルは中々集まりませんでした。
この間、Bitcointalkや、bitcoin.orgなど影響力があるサイトで、ビッグブロック派の一部が書き込みできなくブロックされるなどの事案が起きていいます。
つまり双方のグループから、ブロックチェーンの外で、言論操作、またはそれに準ずる行為が起こっていたことが一定の事実としてあります。

③ユーザーの反撃UASF(2017年2月ー)
合意ができないため、匿名の開発者による新しい提案であるBIP148がリリースされました。
SegWitのシグナリングデータであるbit1を含まないブロックを全て拒絶するというものです。
つまりユーザーによるsegwitをアクティベートをする強行手法です。
平たく表現をすると、フルノードを持つユーザーたちによるマイナーへの反撃でした。
これを支持する人たちはUASFの布教活動をするため、帽子やTシャツを作ったり、フルノードを立てました。
UASFのターゲットは8月1日でした。

④企業連合によるSegWit2x提案(2017年5月ー)
ビットコインを取り扱う事業者は取引所・ウォレットなど多く存在します。

彼らにとっても開発方針が決まらないことは悩みの種です。
ここで中々決まらない方針や、UASFなどの強硬策が準備されるなか、多くの事業者が署名をしたSegWit2x案がだされました。
デジタルカレンシーグループが主導しました。

これはブロックサイズも2MBに引き上げて、SegWitも導入しようという折衷案でした。
8月にSegwitをアクティベートして、11月に2MBにハードフォークするというものです。
しかし、コア開発者はこの提案に同意しませんでした。
コア開発者が同意しなければ、それを実際にアクティベートしようと思っても、コードがありません。

SegWit2xグループも2MBのハードフォークコードを書く開発者を集めましたが、リリース前から様々なバグが指摘され、その開発者グループの技術力の質は、コア開発者グループと大きく離れたものであることは誰からも明らかでした。
しかし、基本的にはこれを多くのエンティティが支持をして、結果、85%の賛成シグナル、Segwitシグナルをだしていないブロックは無効であるというBIP91の方式を多くのリリースされます。

⑤SegaWitロックイン、ビットコインキャッシュ 誕生(2017年7月下旬〜)

SegaWit2xの一環であった、このBIP91という方式でSegWitがロックインされます。
また、同じ週に、突然ビットコインキャッシュのサイトがローンチされます。
ビットコインキャッシュのフォークは、結局、公式には認めていませんが、ViaBTCやBitmainが主導をしたものでしょう。
8月1日は当初UASFが実行予定とされていた日付でした。
実際に8月1日に、新しいチェーンがフォークされ、ビットコインキャッシュ が誕生、2つのが派閥は別のチェーンとして離婚をしました。

⑥SegWIt2xで合意した2MBのアップデートは履行されず(2017年11月〜)
SegWIt2xで合意をしたはずの2MBのアップデートは2017年11月に行われるはずでしたが、結局行われませんでした。
それはコア開発者がコードを書いていないからです。
2xチームでもごく数人での開発者がコードを書いていましたが、結局そのハードフォークコードの質を支持する事業者は11月の時点ではほとんどおらず、コア開発者が開発をするビットコインと、彼らが存在しないビットコイン、その二つから前者を選びとって今に至ります。

ビットコインのステークホルダーの三権分立

一連のやり取りを整理すると、ビットコインのネットワーク内でいかなるプレイヤーもクリティカルな決定権は持っていないことがわかります。
このような議論のなかでは、「一番大事なのはマイナーである」「そうではなく、開発者である」など様々な議論があります。
しかし、これについては結局、どのプレイヤーが一番重要かなどと単純化して答えることはできません。
個人的には、基本的には三権分立だと考えており、整理をすると下記のようになります。

・マイナー

二重支払いの監視を行い、台帳のブロックを生成し、セキュリティを担保するネットワークで重要な存在です。
ハッシュレートを提供する形でビットコインのセキュリティを上げています。
一方で彼らがコミュニティから支持をされなければ、開発者はコードの開発から離れ、ユーザーはビットコインを売却することで彼らの利益を脅かすことができます。

・開発者

ビットコインのクライアントを開発する開発者は極めて重要な存在です。
彼らは、ボランティアであり、彼らのモチベーションは、様々な高度な技術提案がされるビットコインコミュニティの中コードが書けることそれ自体です。
しかし彼らが悪意あるコードを書いて、ソフトウェアをリリースした場合、マイナーやフルノードを持つユーザーや事業者は新しいクライアントをダウンロードしないという選択肢をとることで開発者にアクションをすることができます。

・ユーザー

ビットコインのネットワークにおいてユーザーは、ビットコインを用いてプロトコルの方針への投票などが出来ません。
マイナーや開発者の行動に賛同できない場合は、コインを売って、ネットワークのステークホルダーであることをやめるくらいしか現実的な選択肢はありません。
ですが、そうではないという主張もあり、ユーザーがビットコインのフルノードを持ち、自分がトランザクションを検証し、支持をするソフトウェアの形式をユーザー自身が選ぶべきだという意見があります。
そうすることで開発者に対しての抑止力をユーザーが発揮することも可能です。
しかし、これは少なくとも今のところ、一般ユーザーはフルノードを持っていることは多くないですし、現実的ではありません。
ですが、そういった形でユーザーがネットワークに参加をする可能性を残しておくためにも、フルノードはなるべく運用しやすく、ブロックサイズはなるべく小さい方が望ましいだろうという考えが、現在のビットコインコミュニティの多数派の考え方なのではないかと思います。

d10n labで配信をしたレポート全文では、ビットコインのディストリビューションの検証、集権化の実際、中国がビットコインに与える影響、先端技術のオーバービューなどを書いています。興味ある方はぜひご覧ください。

目次

*ビットコインが、他のパブリックブロックチェーンと比べて何が凄くて、何が凄くないかを考える。

*ビットコインのガバナンスについて
*UASFとは何であったか、ビットコインの内紛はどのように終結したかのおさらい

*ビットコインのステークホルダーの三権分立
*ビットコインのディストリビューションがいかにフェアであったか。
*現在のビットコインの分布、取引所を除く上位ビットコイン32アドレスは誰が保有しているか
*Ethereumなど他のブロックチェーンとのディストリビューションの比較
*ディストリビューションで見るビットコインの唯一無二性
*ビットコインは本当に集権化されていないか?(クライアント観点)
*ビットコインは本当に集権化されていないか?(中国がビットコインのネットワークに与える潜在的な影響、プリンストン大学とフロリダ大学の共同研究を元に考える)

*ビットコインの問題点(なぜビットコインでキャッチーなアプリケーションが中々生まれないのか。)

ービットコインで今後数年で実装が期待される技術提案
*MAST(Scriptをコンパクトに実装し、ビットコインのスマートコントラクトのハードルを下げる。)
*Schnorr署名(署名方式の変更によるトランザクションサイズの軽減)
*Bulletproofs(トランザクションサイズが小さい秘匿トランザクション)
*Liquid Network(フェデラルサイドチェーン)
*RSK(Ethereum互換のサイドチェーン)
*Drivechain(汎用性のあるサイドチェーン)
*Mimblewimble(ファンジビティとスケーラビリティを解決するサイドチェーン)

(続きは、d10lab研究所サロンに入会してお読みください。)

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