社会考察・未来予想

GAFAなど巨大IT企業とブロックチェーン。彼らの現在の取り組みと背景、モチベーション

d10n labで配信をしたレポートでは、GAFA(google、Amazon、Facebook、Apple)などの巨大IT企業によるブロックチェーンの取り組みや背景を概観しました。

また、ブロックチェーンや、それを用いたIDサービスなどは、巨大IT企業の寡占を覆す処方箋であり、中央集権の代名詞であるような巨大IT企業に対して、ブロックチェーンはアンチテーゼのように語られることも多くあります。
このことについても前提から整理してレポート全体でまとめ、私見も述べようと思います。

前提、巨大IT企業に対するバッシング

Facebookとgoogleの広告売り上げは、全米のインターネット広告市場の60%を寡占しています。
また、Facebookに関しては、FacebookのAPImと広告ターゲティングを巧妙に利用をして、米国をはじめとした複数国の選挙戦に介入をしたケンブリッジアナリティカ事件は、引き続き話題になっています。

EUでは、巨大IT企業への規制の側面が強いデータ保護規制GDPRが2018年5月より施行をされ話題になりました。
GDPRの案自体を長らく推し進めていたのはドイツ社会民主党のトップであったマーティンシュルツ氏であり、彼はgoogleとFacebookを名指しで批判し、これらの企業が存在をしなかった1995年にインターネットを戻すべきであると公言しました。

GDPRは、これまでグローバル化を推し進めているように思えた民主主義国家の集合体であるEUが行うデータローカリゼーション規制として注目を集めましたが、GDPRの事例を踏まえ、同様の規制はその他の国でも検討されています。

また、米国や欧州では、こういった巨大IT企業の問題点を指摘するニュースがほぼ毎日流れ、それらに関連する書籍もベストセラーになってるものがアメリカで2018年に複数発刊されています。
その間にも、2018年10月に、Facebookは、ユーザーデータを3000万人流出、Googleに関しては、春先に50万のデータ流出をしており、それを公表していなかったとWallStreetJarnalが報じ、その後gogleはこれを認めました。

以上のようなニュースが毎日流れ、多くの人はそれを認識しているにも関わらず、人々は引き続きgoogleやFacebookを使い続けるということは、行動とその認識や主張に矛盾があります。
そこで、ブロックチェーンがそれらの処方箋になるという観測もありますが、ブロックチェーン業界の著名なプレーヤーへのパネルディスカッションでも、「人工知能(機械学習)とブロックチェーンはコンフリクトするのか、それとも交わって収斂をしていくものなのか?」という質問は時折ありますが、あまりはっきり論理的な回答を示しているものはありません。

つまり、巨大IT企業とブロックチェーンの関連性の未来予測は、恐らくいずれものプレーヤーがはっきりできていないはずであり、本レポートにも憶測や私見が含まれた未来予想も記述すると予め書いておきます。
本レポートでは、これらのトピックについて、事象整理と未来予想を行なっていくものです。

巨大IT企業を敵視するEUと、データ保護規制のGDPR

この施策における個人データとは、名前、写真、メールアドレス、銀行口座情報、SNSの内容、場所の詳細、医療情報、コンピューターのIPアドレス、生体遺伝子情報など、ともかくあらゆるものが適用されます。
Facebookやgoogleなどの企業はEU域外にユーザーのデータを持ち出すことが禁止され、経営体制は抜本的に変更を強いられるほか、IT巨人以外にも多くの企業がこの影響を受けます。
GDPRの違反では最大で企業の全世界売上高(年間)の4%、または2000万ユーロのうちいずれか高い方が課され、罰則金は非常に大きいです。
民主主義国家の集合体EUで新しく作られるインターネットの壁は、いくつかのメディアでは21世紀のベルリンの壁とも言われ物議を交わしています。
GDPRの基本の枠組みは下記です。

1.忘れられる権利
ーユーザーがアカウントを削除をしたら、そのサービスの提供元のサーバーからデータは消さなくてはいけない。


2.データ保全を知る権利
ーデータがいつハッキングされたかユーザーは知る権利がある。


3.データアクセスの容易性

ーデータの移植性、ユーザーはサービス間でデータを移動できる


4.プライバシポリシーの徹底
ーユーザーが読まない長いプライバシーポリシー規約ではなく、ユーザーデータを何にどのように使用をするか分かりやすく明記をする。



上記が大まかな枠組みになりますが、GDPRの施行に伴い、多くの企業はプライバシーポリシーの改定を行ない、今年の4月から5月にかけて、様々な改定通知が日本のユーザーにも届いていたことは記憶に新しいはずです。
というのも、GDPRの条例のひとつに、「ユーザーが企業のデータ利用に同意をすること」「データをどのように活用をするか“わかりやすく“説明をすること」が加えられています。

このため、例えばGoogleは、プライバシーポリシーを1分に満たない短い動画バージョンなどでも新しいものを出しました。

”わかりやすい説明”とは定量的な概念ではないため、これに違反をすると巨額な罰金を課せられるというのは非常に難しい話ですが、googleの新しいプライバシーポリシー動画は、非常に簡単な英語と挿絵などが混ざっており、わかりやすさを意識していることが伝わります。
さて、そうして準備をしながらも、Googleおよび、Facebookグループ(Facebook、Instagram、WhatsApp)は、GDPRの施行初日から、各社合計で$9.3B(約1兆円)の罰金の支払いを命じられています。

また、GDPRとは別件で、欧州委員会はgoogleに対して、Androidスマートフォンに様々なgoogleアプリがプレインストールされていることは独占禁止法違反であるとして、$5Bの罰金支払いを命じ、この罰金の金額は独裁禁止法の罰金としては市場最高額になりました。
欧州委員会は、2020年までに、EU域内の個人データの価値は、欧州市場だけで1兆€(約130兆円)に達すると予測し、その額はEUのGDPのほぼ8パーセントにあたると主張しています。

欧州委員会は、国家政府の共同体として、巨大IT企業を明確にユーザーの個人情報を狡猾に得て、換金をする企業たちであると位置付けていると言えます。

GDPRの制度設計ですでに露呈している問題点

GDPRが施行される今年5月、自分はヨーロッパにいましたが、実際に現地の人や企業にヒアリングをすると、巨大IT企業に対する不平も聞こえますが、違う意見も聞こえてきます。
それは、GDPRによる規制変更の対応コストは非常に重く、結果的にその対応コストを支払えるのは巨大IT企業であるという声です。

というのも、多くの中小企業やスタートアップにとってGDPRに対応するコストは十分でないので、サービスの 展開先としてEU市場を諦めるケースが多発するという意見でした。

GDPRに対応するコストとは、多岐に渡ります。
例えば、新しいプライバシーポリシーの作成、ユーザーがデータの削除を求めてきたら即座に消すことが決められているのでその対応、他にも様々なものがあり、これらに対応をするためのコンサルティングビジネスもかなりの規模で生まれているそうです。

ユーザー情報を利用したデータマイニングも、これまでEU域外でやっていたとしたら、EU域内で行わなくてはなりませんので、新たな採用も必要になります。
Googleは、今年4月の決算時の会見で、GDPRについて過去18カ月の期間をかけて準備してきたと説明していますが、多くの企業にとってそんな余裕はなく、元々は大手IT企業に対するアンチテーゼとしての枠組みであったGDPRで最も得をするのは、実はIT巨大企業やある程度大手企業であり、中小企業やスタートアップ、あるいは個人事業主は、その対応コストに耐えられないという見方もあります。
つまり、ユーザーはどのようにデータが保存されているか分かるようになったり、プライバシーの明確化は、それが結果的に良いものなのかすらまだ分かりませんが、良いものだとしても、それに対応をするにはコストが重く一部制度設計に問題がすでに露呈しています。
一方で、すでにEUのGDPRと類似の取り組みは、今後、中国、ロシア、インドでも実施されることが具体的に議論されている段階で、これらは明確に現代の社会問題になっています。

googleやFacebookなどに指摘される現在の明確な問題点は下記の2つに分類されます。

・限られたトラストエンティティに、個人情報が集まりすぎていることによるセキュリティリスクと潜在的なモラルハザードリスク
・データという現代の新しい換金性がある資源を国境を関係なくやり取りしていることによる国家間、または国家と企業の問題

レポート全体ではこれをさらに掘り下げて考え、また各社が今時点でブロックチェーンでどのような取り組みをしているか整理、また英語圏で話題になっている本である「Life After Google」「AI Super-powers China」を取り上げ、考察を深めます。

目次
*前提、巨大IT企業に対するバッシング
*巨大IT企業を敵視するEUと、データ保護規制のGDPR
*GDPRの制度設計ですでに露呈している問題点
*大手IT企業が参加をするOSSプログラムDTP
*各社におけるブロックチェーン関連の動き・google
*各社におけるブロックチェーン関連の動き・Facebook
*各社におけるブロックチェーン関連の動き・Amazon
*各社におけるブロックチェーン関連の動き・IBM
*各社におけるブロックチェーン関連の動き・MicroSoft
*「Life After Google」を読む
*google中国前社長の「AI Super-powers China」を読む
*総論

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