技術解説

ブロックチェーンのガバナンスについて。プロトコルを分散的に決定する仕組みとその是非、トークンの評価算定まで

はじめに。ブロックチェーンのガバナンスモデルとは。

本レポートでは、ブロックチェーンのガバナンスモデルについて考察を深めることをテーマにします。

ブロックチェーンのガバンスモデルは、現在広く議論がされているテーマです。

ブロックチェーンのガバンスモデルは時に定義が広く用いられますが、本レポートにおいて、「ブロックチェーンのガバナンスモデル」は、ブロックチェーン(ソフトウェア)のアップデートをどのように決定をするかという定義で進めていきます。
パブリックブロックチェーンはソフトウェアであり、広く使われていくためにはより改良をしたり、場合によって新しく登場するアプリケーションに影響をされてプロトコル部分のアップデートが要求されます。

つまり、運用を続ける限り、長期に渡り、メンテナンスをし続けなければいけません。

しかし、非中央集権・分散的に管理をするブロックチェーンにおいては、ある特定のエンティティがそのメンテナンスをするわけではありません。

そこでGitHubでプルリクエストされたコードでどれを採用をすれば良いのか、採用条件はなにか、採用方式にどのような設計をするのかという議論が、ブロックチェーンのガバナンスモデルと考えてもらえれば良いでしょう。

各ブロックチェーンには、様々なプレイヤー、 開発者・マイナー・ユーザー・アプリケーションおよびサービスレイヤーが存在し、各者に対してどのような権限とインセンティブを与えるべきか、または与えるべきではないか、という議論が主で、この設計にトークンが用いられることもあります。
特に最近登場している新しいパブリックプロトコルでは、このあたりの設計が広く議論されています。

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この設計方式については、広く議論をされており、本レポートではそれらの議論を俯瞰したり、そのガバナンス設計と紐づくトークンモデルの事例紹介を踏まえて考察を深めていきます。

ソフトウェアのアップデートについて大きく揉めた2017年7月からブロックチェーンのガバナンスの必要性を考える。

2017年の6-8月は、ビットコインおよび、ブロックチェーンが誕生してから、ソフトウェアのアップデートについて最も大きく揉めた時期です。
当時、ビットコインコミュニティの開発グループでは、ブロックサイズをあげるべきと主張をするグループと、SegWitを導入してレイヤー2スケールをするべきと主張するグループが分かれました。
結果的にビッグブロック派のグループは、ビットコインキャッシュ というハードフォークをしたチェーンに活動を移行しました。

本レポートでは、様々なガバナンスモデルを紹介したり、考察しますが、前提として、いかなるガバナンスモデルを用いても、本当に全体の意思決定に賛同しないプレイヤーが2組以上存在する場合は、ハードフォークした2つ以上のチェーンは生まれ得ます。

しかし、このときのビットコインコミュニティでは、マイナーがプロトコルの意思決定を全てを決めるのか?という批判や、コードにこれまでコミットをしてきた開発者は投票権を持たないのか?などということが議論されました。

長期化する議論では、マイナーや開発者ではないビジネスレイヤーが中心で提案したSegWit2xや、SegWitのシグナリングデータであるbit1を含まないブロックを全て拒絶するBIP148(UASF)をするユーザー中心の強硬策など様々な提案がされて、これらの論争は2年以上を費やしました。

つまり、本当にクリティカルな議論になったとき、アップデートを決定するフレームワークが曖昧であることが露呈した場面でもあります。

結果的に、ビッグブロックコミュニティは、ビットコインキャッシュとして新しいチェーンをスタートさせますが、こういったソフトウェアのアップデートに関する意思決定についてもっとベターな手法はないのか?という議論がブロックチェーンのガバナンスモデルです。
ブロックチェーンのガバナンスモデルのパターンは、大きく2つに分かれます。

・オフチェーンガバナンス
・オンチェーンガバナンス

の2つです。
それぞれ解説をします。

オフチェーンガバナンスとはなにか(bitcoin、Ethereum etc)

まず、オフチェーンガバナンスですが、これはビットコインやEthereumに採用されています。

ビットコインのブロックチェーン自体には、基本的にはコードをどのようにすればアップデートさせるかというガバナンスモデルは組み込まれていません。

ビットコインやEthereumのアップデートは、放っておけば勝手にシステムがアップデートされる、という類のものではなく、マイナーやフルノードのオペレーターによる自発的なアップデートで行われます。
つまり互換性があるノードを各々がアップデートしていきます。

採用をするコードがどのように評価されるかについても、ビットコインの場合、BIPという形式でブロックチェーンの外でwebで提案され、そのあとにGitHubでコードが書かれます。
それがビットコインのノードソフトウェアであるBitcoin Coreの新しいアップデートとしてリリースされ、各フルノードオペレーターやマイナーがアップデートしていくことが大まかなプロセスです。
Ethereumの場合も、ビットコインよりクライアントの種類が少し多いですが、このプロセスは変わりありません。

オンチェーンガバナンスとはなにか(EOS、Dfinity、Decred etc)

ビットコインやEthereumが上記のように、ブロックチェーンにガバナンス決定プロセスが組み込まれていないオフチェーンガバナンスであることに対して比較的新規性が高い意思決定モデルが、オンチェーンガバナンスです。

EOSやDfinity、Decred、Tezosなどがオンチェーンガバナンスを採用するブロックチェーンです。
これは、どのような条件を満たしたらコードが自動的にアップデートされると規定されているプロトコルです。
ノードオペレーターはクライアントをアップデートするかどうかの意思決定は必要なく、変更反映は自動的かつ強制的に行われます。
つまり各ノードがアップデートを決定する必要がないので、アップデートがデフォルトになります。

そして、アップデートが実行される際の、満たされるべき条件は規定されており、EOSであればBlock Broducers(EOSネットワークの21のバリデータ、詳しくは過去のレポートを参照ください。)による投票です。

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そのBlock Broducersはトークンホルダーによる投票で選ばれます。
ビットコインやEthereumと最も異なる点は、ユーザーがプロトコルの改善の意思決定に投票権利を持っているということです。

このオンチェーンガバナンスは、ビットコインやEthereumで、ブロックチェーンの外で曖昧になってしまっているアップデートのプロセスを明確化するように見える一方で、新規性の高い分野で長期的に上手くいくモデルかは現在まさに議論をされている最中です。
このオンチェーンガバナンスは、最も基盤のインフラストラクチャーであるレイヤー1のチェーンだけでなく、アプリケーションレイヤーやレイヤー2にガバナンストークンを付与として組み込まれる動きもあります。

本レポートでも、この新規性の高い分野であるオンチェーンガバナンスの事例、問題点、オフチェーンガバナンスと比べて何が優れているのかという検討などには文字数を多く割いていきます。
・・
d10n labで配信をしたレポート全文では、ブロックチェーンのガバナンスモデルについてさらに深く解説と考察を行っていきます。

各ブロックチェーンがどのようにガバナンスに対してアプローチしているか解説、ガバナンストークンの評価算定方法を投資家目線で検討などを行います。

恐らく、このトピックについて現時点で最も網羅性の高いレポートとして完成されているはずです。ご興味ある方はお読みください。

目次
*はじめに。ブロックチェーンのガバナンスモデル
*ソフトウェアのアップデートについて大きく揉めた2017年7月からブロックチェーンのガバナンスの必要性を考える
*オフチェーンガバナンスとは何か(bitcoin、Ethereum etc)
*オンチェーンガバナンスとは何か(EOS、Dfinity、Decred etc)
*ビットコインやEthereumなどで指摘されるオフチェーンガバンスの問題点
*オンチェーンガバナンスの実装の難しさ、これからされるべき検証
* オンチェーンガバナンスが組み込まれたプロジェクトの事例:Decred
*オンチェーンガバナンスが組み込まれたプロジェクトの事例:DASH
*オンチェーンガバナンスが組み込まれたプロジェクトの事例:EOS
*オンチェーンガバナンスが組み込まれたプロジェクトの事例:Dfinity
*ガバナンスが組み込まれたプロジェクトの事例:MakerDAO
*ガバナンスが組み込むことを目指すプロジェクトの事例:0x、dYdx
*ガバナンストークンの評価算方法について考える。
*a16zは、MakerDAOに投資についての考察
*現実社会におけるガバナンスモデル
*ブロックチェーンに民主主義は必要かどうか
*ブロックチェーンによるガバナンンスモデルとOSS
*総論

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