中国

寄稿レポート:杭州市ブロックチェーン産業概観

d10n Labでは、こじらせ女子(https://twitter.com/icotaku_utgirl)さんの寄稿レポート「なぜ仮想通貨に関わるマネロン対策が国際社会で重視されているのか〜国際金融の歴史から読み解く」を配信しました。

こじらせさんには以前にも、東南アジア発のプロジェクトでよく見られる「リバースICO」や、国際金融の歴史から紐解くAML/CFLの国際協力状況についてレポートしていただきました。

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中国のブロックチェーン都市といえば、歴史ある政治の中心でありながらスタートアップの聖地・中関村を擁する北京、金融・経済の中心で外国資本が多く集まる上海、若い起業家が集まり「中国のシリコンバレー」として名高い深センを思い浮かべる方が多いと思いますが、杭州もそれら三都市に劣らぬ勢いで、ブロックチェーン都市の地位を確立しています。杭州市には業界黎明期から主要なプレイヤーや優秀なエンジニア人材を擁していましたが、直近2年ほどの政府の積極的な産業振興策により、ますます脚光を浴びるようになりました。

本格的なブロックチェーン特区を建設したのも、ブロックチェーンを注力すべき産業として市政府公式の報告書に記載したのも、そして官民共同でブロックチェーンファンドを立ち上げたのも、全て杭州が全国初となっています。また、政府・民間・教育/研究機関同士の連携も盛んで、それぞれの強みを活かしながらブロックチェーンの研究・開発、そして商業化が進められています。

今回のレポートでは、杭州市のブロックチェーン産業を産官学(企業・政策・教育/研究機関)の三つの側面から概観し、三者がどのように連携して強力な産業エコシステムを形成しているのかを紐解きます。

イントロ

本稿では、中国有数のブロックチェーン都市として知られる浙江省・杭州市のブロックチェーン産業を概観します。

中国のブロックチェーン都市といえば、歴史ある政治の中心でありながらスタートアップの聖地・中関村を擁する北京、金融・経済の中心で外国資本が多く集まる上海、若い起業家が集まり「中国のシリコンバレー」として名高い深センを思い浮かべる方が多いと思いますが、杭州もそれら三都市に劣らぬ勢いで、ブロックチェーン都市の地位を確立しています。杭州市には業界黎明期から主要なプレイヤーや優秀なエンジニア人材を擁していましたが、直近2年ほどの政府の積極的な産業振興策により、ますます脚光を浴びるようになりました。本格的なブロックチェーン特区を建設したのも、ブロックチェーンを注力すべき産業として市政府公式の報告書に記載したのも、そして官民共同でブロックチェーンファンドを立ち上げたのも、全て杭州が全国初となっています。また、政府・民間・教育/研究機関同士の連携も盛んで、それぞれの強みを活かしながらブロックチェーンの研究・開発、そして商業化が進められています。

本稿では、杭州市のブロックチェーン産業を産官学(企業・政策・教育/研究機関)の三つの側面から概観し、三者がどのように連携して強力な産業エコシステムを形成しているのかを紐解きます。日本のブロックチェーン関係者で杭州に興味をお持ちの方、特に視察の予定がある方や事業展開を検討されている方にとって有益な記事となれば幸いです。

◆杭州市の概要

杭州(こうしゅう・ハンジョウ)は中国東南の沿岸部に位置する浙江省の省都で、面積は岩手県と同程度の16853平方キロメートル、人口は神奈川県と同程度の956.8万人です。中国最大の都市・上海から南西約160kmに位置し、高鉄(中国の新幹線)で1時間ほどで行くことができます。

古代から数えると2000年の歴史を持ち、五代十国のうちの一つ呉越国(A.D. 907〜978)と南宋(A.D. 1127〜1279)の首都も置かれ、中国八大古都の一つにも数えられています。世界文化遺産にも登録されている西湖を始め、歴史上有名な文人ゆかりの地や自然豊かなリゾート地が多く存在し、その美しさは「人間天堂(人間界の天国)」「上有天堂,下有苏杭(天上には天国、地上には蘇州と杭州あり)」とも讃えられています。北京から延びる大運河の終着点であったことから、古代より商業の中心地として栄え、中でも絹や茶の生産が伝統的に行われてきました。

近代に入り上海とを結ぶ鉄道が開通すると、上海を輸出拠点とした軽工業が発達、さらに21世紀に移ると、Alibabaグループの成長や政府によるスタートアップ誘致政策を背景に、IT、特にソフトウェア産業が市の成長産業となりました。Alibabaの他にも、哇哈哈集団(ワハハグループ・食料品)、農夫山泉(食料品)、万向集団(機械・自動車)、吉利自動車(自動車)など、中国を代表する数々の大企業が杭州に本部を置いています。2017年度のGDPは1兆2556億元(=約20兆円)と、中国全土でも第10位にランクインしています。2016年9月には、中国初のG20首脳サミットが開催されたことでも話題になりました。

では、ブロックチェーン都市としての杭州を示す統計をいくつか見ていきます。中国全国の省および直轄市のブロックチェーンスタートアップ数を見てみると、北京市・広東省・上海市に続き、杭州が位置する浙江省が59社で第四位となっており、このうち55社が杭州市に拠点を置いています。これはブロックチェーンスタートアップのみの数であり、Alibabaのように元々他の領域からスタートしブロックチェーン領域にも進出した企業を含めると、杭州市だけで721社存在するとの統計も出ています。

また、中国はブロックチェーン関連の特許申請が盛んなことでも有名ですが、2018年8月末までの都市ごとの特許申請数を見ると、杭州は北京・深セン・上海に続き四位につけています。企業別の特許申請数を見ても、上位1位(Alibaba)、8位(Chain33)、12位(Yunphant)の3社は杭州市の企業です。これらの企業はグローバルの特許申請数で見てもいずれもトップ20にランクインしています。

中国において政治・経済的な四大都市といえば「北上広深(北京・上海・広州・深セン)」ですが、この統計からも分かるように、中国のブロックチェーン四大都市といえば「北上深杭(北京・上海・深セン・杭州)」と言われています。

四大都市の中で比較をすると、取引所・ウォレット・マイニングハードウェア等多様な業種が集まる北京、金融の中心としてのバックグラウンドを活かした分散型IDやスマートコントラクト開発が盛んな上海、ハードウェア製造の強みを活かしたマイニングハードウェアの製造が盛んな深センと比べ、杭州はAlibabaの城下町としてFintech領域や、ソフトウェア開発における強みを活かしたエンタープライズ向けBaaS領域が盛んであるのが特徴です。
次章からは、杭州ブロックチェーン産業における企業、政策、教育/研究機関の紹介と分析を通して、その産業エコシステムの特徴を明らかにしていきます。
・・・・・

(続きは、d10labリサーチコミュニティに入会してお読みください。)

◆目次
*イントロ
*杭州市の概要
*ブロックチェーン産業をとりまく産官学の分析
-企業
-政策
-教育/研究機関
*総括:杭州市ブロックチェーン産業の特徴

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