その他のパブリックプロトコル

寄稿レポート:NEO・Ontology・Onchainが形成するエコシステムを概観する

d10nLabリサーチコミュニティでは、こじらせ女子(https://twitter.com/icotaku_utgirl )さんによる寄稿レポート「NEO・Ontology・Onchainが形成するエコシステムを概観する」を配信しました。

NEO・Ontology・Onchainが形成するエコシステムを概観する

本稿では、中国を代表するパブリックチェーンであるNEOとOntology、その関連会社となっているブロックチェーン企業・Onchainの概要や沿革、およびこれらを取り巻くエコシステムを俯瞰します。

Ontologyは当初NEO保有者にエアドロップする形で配布されたため両者に関係があることは自明ですが、どのような関係にあるのか、どのような仕様の違いがあるのか、さらにその背後にあるOnchainの存在は、あまり注目されていません。

そこで本稿では、NEO・Ontology・Onchainの概要や沿革、創立メンバーやキーパーソンを紹介した上で、NEOとOntologyについてはそのアーキテクチャー、Onchainについてはその事業内容について詳説します。さらに、DApps・開発者コミュニティ・その他周辺事業など、NEOとOntologyが形成してきたエコシステムを概観します。最後に総括として、仕様やエコシステムの面で両者の比較を行い、その棲み分けについて考察します。

NEO・Ontology・Onchainの概要と沿革

三者の発祥は、2014年2月より開発が始まったAntSharesというパブリックチェーンプロジェクトです。Antsharesは Digital Assets、Digital Identity、Smart Contractの三つの要素によるSmart Economyの構築を掲げ、後にNEOにリブランディング、「中国版イーサリアム 」とも呼ばれるようになります。

一方、Antsharesのコアチームは開発を進める中で、企業や政府からのプライベートチェーン・コンソーシアムチェーンに対する関心の高まりに気づき、これらの顧客向けにブロックチェーン技術導入によるソリューションを提案する企業として、2016年にOnchainを創業しました。2017年9月以降、ICOによるトークンの発行や取引所での流通が厳しく制限されてはいるものの、中国国内にはトークン発行を伴わないプライベートチェーン・コンソーシアムチェーンの導入支援企業や、そのような用途を想定したBaaS(Blockchain as a Service)を提供する企業が多く存在し、Onchainも国内ではそれらと同じ位置付けということになります。

後にそのOnchainから派生する形で生まれたのがOntologyです。Ontologyは実際のビジネスシーンで企業が直面する信用問題をパブリックチェーンで解決することを目指し、”Decentralized Trust Ecosystem” をスローガンに掲げるプロジェクトです。

このように、パブリックチェーンのAntshares(後のNEO)が最初に始められたプロジェクトで、そこから企業や政府向けソリューションを提供するOnchain社が生まれ、さらにOnchain社から企業向けパブリックチェーンのOntologyが生まれたということになります。ただし、三者は独立した法人で、資本関係はありません。

AntsharesのCo-founderで今もなお中心人物であり続けているHongfei DaとErik Zhangは、現在はそれぞれOnchain社のCEOとCTOを務めており、NEOではCEO・CTOといった肩書きは持たず “NEO Foundation Core Members” という位置付けになっています。これは、NEOがオープンソースのパブリックチェーンとして、企業体ではなく世界各地のコミュニティにより開発・運営されていることを表していると考えられます。一方のOntologyはOnchainのメンバーによって進められていますが、NEOのコアメンバーとの重複は見られません。

以下がNEO・Ontology・Onchainの発展を表す詳しいタイムラインです:

2014年2月 ブロックチェーン起業サロンbitsclubのメンバーがAntsharesの開発に着手。この時シードラウンドで、メンバーの自己資金とファンドからの出資金あわせて50万元(800万円)ほどを調達
2015年6月 AntsharesがGitHubでオープンソースに
2015年10月 Antsharesが1度目のICOで2100BTCを調達
2016年4月 Antsharesで用いられるコンセンサス・アルゴリズム、dBFT(delegated Byzantine Fault Tolerance)のホワイトペーパーを公開
2016年 企業向けソリューションを提供する会社としてOnchainが設立。企業や政府との共同研究を着実に進め、KPMGのTop 50 Fintech Company in Chinaにも選出。
2016年8月 Antsharesが2度目のICOで6119BTCを調達
2016年10月 Antsharesメインネットローンチ
2017年6月 AntsharesがNEOへとリブランディング
2017年10月 トークン規格のNEP-5を発表、NEO上で独自トークンを発行することが可能に
2017年11月 Ontologyの構想を発表
2017年11月〜2018年3月 ONTをエアドロップにより配布
2018年5月 NEOとOntologyが「開発面での戦略的パートナー」としてMOUを締結
2018年6月 Ontologyメインネットローンチ

創業メンバーおよびキーパーソン

NEOの顔といえばCEOのHongfei DaとCTOのErik Zhangですが、Antsharesの創業期には彼ら二人の他にも、bitsclub(比特创业营)という上海ベースのブロックチェーン起業家サロンのメンバーが深く関わっていました。

Antshares 創業期コアメンバー

Hongfei Da(达鸿飞):NEOおよびOnchainのCo-Founder兼CEOで、中国語での愛称は「达叔(ダーおじさん)」。浙江大学の文系学部卒業でありながら自らコードを書いてウイルスを作成できるほどの奇才だった。2011年にビットコインを知り、2013年頃からブロックチェーン業界に本格参入。2014年にNEOを創業するまでは、メディアの8BTCや起業家サロンでbitsclubの設立にも関わった。

Erik Zhang(张征文):NEOおよびOnchainのCo-Founder兼CTO。サイバーセキュリティの分野で経験を積んだ後、国内オンラインゲーム大手のシャンダ・ゲームズ、そして国内仮想通貨取引所のHuobiで活躍。Huobi在籍時に北京で開催されたカンファレンスにてDaとAntsharesのことを知り、2014年8月にCTOとして参画。

Hitters Xu(徐义吉):NEOのCo-FounderおよびNebulasCo-Founder兼CEO。MicrosoftとGoogleを経てブロックチェーン業界に参入し、国内最大のICOポータルであったICO365立ち上げや国内初の国際ビットコインカンファレンスの主催に携わる。2013年にはDaらとともにbitsclubを創業、その活動から生まれたAntsharesにも深く関与していた。 1年ほどでAntsharesを去り、ビットコインを使った国際間決済システム・GemPayの創業や、Ant FinancialでのBaaSプラットフォーム開発に携わりる。最終的には独自のパブリックチェーン・Nebulasを立ち上げている。

3名のコアメンバーの他にも、弁護士の孙铭が法務面を担当したり、王冠がマーケティング・PRで貢献したりするなど、bitsclubのメンバーが各々の専門性を活かしてAntsharesを支えていました。

bitsclub公式HPでも、AntsharesとNebulasが派生プロジェクトとして挙げられています。
Ontology創業者

一方、2018年2月より開発が始められたOntologyのコアメンバーはOnchainから来ており、DaやErikなどNEOのコアメンバーが直接関与しているわけではありません。

Jun Li(李俊):OnchainおよびOntologyのCo-Founder兼CEO。コミュニケーションエンジニアリングの修士号のほか、MBAやPMP(プロジェクトマネジメントの国際資格)も持つなど、幅広い分野で専門性を持つ。外資系IT企業や中国の大手証券取引所でエンジニア兼マネージャーとして働いた後、2016年Onchainの法人化のタイミングで創業メンバーとして参画。2018年にはOntologyを創業。

二つのパブリックチェーン・NEOとOntologyの仕様

NEOとOntologyの仕様には若干の差異があるものの、両者ともガバナンストークンとネットワーク料支払いのためのトークンの二つが存在し、かつ選ばれたノードによってコンセンサス形成が行われるPBFTがベースとなっています。

NEO

NEOは、Digital Assets、Digital Identity、Smart Contractの三つの要素でSmart Economyの実現を目指すパブリックチェーンです。EthereumのERC20と同じように、NEP-5規格を用いることで独自トークンを発行する事もできます。

◾️トークン設計:NEOとGASのデュアルモデル

NEO(元ANS)はネットワークのガバナンス、つまりはコンセンサス形成に参加するbookkeeperへの投票に用いるトークンです。全部で1億枚がgenesis block生成の時点で発行されているので、いわゆるマイニングは存在しません。1億枚のうち5000万枚を二度のICOで配布し、この時あわせて5億円ほど調達しましたが、残りの5000万枚は段階的に放出され、エコシステムの発展のために使われる予定となっています。以下はその5000万枚の利用用途とロックアップの解除スケジュールです。

1000万枚:NEO Councilメンバーに対するインセンティブ
1000万枚:開発者へのインセンティブ
1500万枚:NEOを使ったブロックチェーンプロジェクトへの投資、NEO Councilが保有
1500万枚:緊急時用に保存

一方のGAS(元ANC)は、トランザクション・コントラクト実行時の手数料支払いに使われるトークンです。1億枚のGASが22年にかけて発行されますが、アルゴリズムに基づいてブロック生成ごとの発行枚数は、下図のように時を減るごとに減少していきます(下図)。発行されたGASはNEOの保有数に応じて各アドレスに配布されます。また、トランザクションやコントラクト実行者が支払うGASは、コンセンサス形成に参加したbookkeeperに配布されます。

◾️コンセンサスアルゴリズム:dBFT(delegated Byzantine Fault Tolerace)

dBFTは、NEOホルダーの投票とNEO Foundationの審査によりコンセンサス形成に参加する代表(bookkeeper)を選び、PBFTと同様の手法で合意形成を行うものです。2016年4月にホワイトペーパーで発表されてから同年10月のメインネットに実装されました。bookkeeper数が少ない分迅速な合意形成が可能で、かつ即座にファイナリティが得られます。ビットコインの3〜7TPS、イーサリアム の15-25TPSに対し、NEOでは15〜20秒ごとにブロックが生成されるためTPSは1000以上になります。

具体的には以下のような手順でブロックが生成されます:

delegateのうち一つのノードがランダムにspeakerとして選ばれる。
speakerは承認待ちのトランザクションを集めてハッシュ値を計算し、他のdelegateに提示する。
speakerが提示したハッシュ値が自分の計算結果と一致していれば、他のdelegateはサインをしてブロックを承認する。
67%以上のdelegateがブロックを承認すれば、新たなブロックとして加えられる。

delegateの中に悪意のあるノードが存在する以下のような場合でも、その数が全ノードの33%以下である限り不正なブロックが生成されることはありません。よってdBFTは33%攻撃態勢を持つと言えます。

Case1) speakerに悪意がある場合(n=3)
悪意のないdelegateは違うメッセージを受け取る。悪意があるのがspeakerか他のdelegateか特定はできないが、どちらかに悪意があるのでブロックを承認せず、投票から離脱する。

Case2) speakerに悪意がある場合(n=4)
speakerは悪意のあるメッセージを二つのdelegateに送り、正しいメッセージを一つのdelegateに送る。自らの計算結果に合わないメッセージを受け取った2/3のdelegateが、speakerの提案を棄却するため、ブロックは承認されない。

Case3) 承認する側のdelegateに悪意がある場合(n=3)
悪意のないdelegateは違うメッセージを受け取る。悪意があるのがspeakerか他のdelegateか特定はできないが、どちらかに悪意があるのでブロックを承認せず、投票から離脱する。

Case4) 承認する側のdelegateに悪意がある場合(n=4)
speakerは正しいメッセージを送るが、それを受け取ったdelegateのうち一つが、受け取ったメッセージは自分の計算結果と合わないと嘘をつく。2/3のdelegateに悪意はないので、2/3の承認で可決される。

順にCase1〜4を表す。

 

d10nLabで配信したレポート全文では、以下の目次に沿って詳細にレポートしています。

目次
NEO・Ontology・Onchainの概要と沿革
 創業メンバーおよびキーパーソン
二つのパブリックチェーン・NEOとOntologyの仕様
 NEO
 Ontology
NEOとOntologyが形成するエコシステム
 NEO
 Ontology
考察
 Onchain・NEO・Ontologyの三者関係
 NEOとOntologyの仕様の比較
 NEOとOntologyのエコシステムの比較
 NEOとOntologyの棲み分け

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