d10n Labでは、「今の時点で見えるDeFi(分散型金融)の実態と、将来予想」のレポートを配信しました。
前提
DeFiという言葉がEthereumのコミュニティ頻繁に使われるようになりました。
Decentralized Financeの略です。またはOpen Financeという呼ぶ人もいますが、おおよそ同じ使われ方をしています。
この呼び方自体はマーケティング用語ですし、ムーブメントみたいなものですが、Ethereum上でスマートコントラクトで稼働する金融システムのレイヤーを総称しています。
このカテゴリのプロジェクトは例えば以下のような分野があります。
・取引(0xなど)

・借り入れや貸付(Compoundなど)

・証券発行(Polymathなど)

・債券発行(Dharmaなど)

・StableCoin(MakerDAOなど)

これらの様々な機能をそれぞれ別々のプロジェクトが取り組んでおり、それら全体を概観してDeFiと呼ばれます。
どのようなプロジェクトが存在するかはこちらのインフォグラフィックが詳しいです。

画像・引用:https://www.theblockcrypto.com/2018/10/12/mapping-out-ethereums-open-finance/
既にこれらのカテゴリは、Ethereumの主要なユースケースの一つになりつつあり、筆者自身も非常に重要な領域であると考えています。
上記の主要なDeFiのプロジェクトについては、すでにd10n Labの過去のレポートで仕組みやアーキテクチャなどについて解説を済ませていますが、本レポートでは、そのうえで今の時点で見える分散型金融の実態と、将来予想について考察を試みます。
あくまで執筆時2019年2月時点での考察になりますが、この分野の考察を深められるきっかけになればと思います。
スマートコントラクトを用いたレンディングが銀行よりも優れている点
下記のコラムは、エンドユーザーがスマートコントラクトによる借入をする利点を観閲に説明しています。
How I took my first loan on Ethereum Blockchain — MakerDAO
https://medium.com/instadapp/first-loan-355d3c84d0ae
コラムの書き手は、20歳以下のユーザーで、最初は利用をするときに不安で実際にトライするまで3日くらい考えたそうですが、実際にレンディングをしてみたことは簡単だったと書いてあります。
MakerDAOでDAIを借入することは、下記の点で銀行より優れていたとしています。
・レンディングを実行するトランザクションフィーは$0.07で、年間の金利は0.5%だった。(一般の消費者がすぐに借りられるのは消費者金融で、5-10%の融資市場で最も高い金利が課されることが多いです。)
・一切の書類を必要としなかった。担保を預託していることと、担保資産の価値が毀損したときの没収はスマートコントラクトによって制御されているため、書類も審査は本質的に必要ありません。
・トランザクションが早い。CDPの発行は2-3分で完了をした。
・銀行と異なり、24時間毎日稼働をしている。
・セキュアであること。このシステムは人によるシステムではなく、人を信頼する必要はありません。信頼するものはオープンソースのコードです。
・年齢制限などもない。この筆者は18歳だったが、借り入れがすぐに実行できた。
上記の内容は、スマートコントラクトおよびブロックチェーンがいかにコンプライアンスコストを削減できるかを表しています。
今後MakerDAOや0xなどのインフラストラクチャーを利用したアプリケーションが増加するはずです。
これは以下に詳しいです。

スマートコントラクト担保経済圏
既にMakerDAOの仕組みなどは、過去のレポートで述べているように、StablecoinのDAIは、ETHがアドレスにロックされていることで、全てのDAIにその価値以上のETHが裏付けされています。
dYdXやCompoundも非常に酷似した仕組みであることも過去に解説しました。
現状のDeFiにおいて、これらはスマートコントラクト担保経済圏だと表現できます。
金融において、バランスシートの資産と負債は常にイコールであり、同時に誰かの資産とは誰かの負債です。
DeFiとは、それをスマートコントラクトで制御していると言えます。
MakerDAOのコントラクトアドレスにETHが担保にされ、”誰かがCDPを将来返済するはずである”、あるいは”担保プールに間違いなくETHが存在する”ということは、常にブロックチェーン上で検証できます。
従来、金融取引は「金を融通する」と書き、金利プレミアムを調整して、現在価値と将来価値を交換するものです。
この現在価値と将来価値を交換するために、貸し手は借り手の様々なクレジットを調査したり、様々な金融商品を開発してきたりしました。
現在のDeFiにおいては、クレジットを調査したりなどはしないで、担保をスマートコントラクトでロックアップすることで現在価値と将来価値の交換をごくシンプル、かつ最低限の形で実現していると言えます。
d10n Labのレポート全文では、このDeFiというムーブメントが示すことについてより考察を深めます。
目次
*前提
*スマートコントラクトを用いたレンディングが銀行よりも優れている点
*スマートコントラクト担保経済圏
*流動性プールという概念、ミドルウェアプロトコル間の競争
*MakerDAOのStability Feeの独立性
*MakerDAOの金利効率から考える新しい債権システムの可能性
*現在のDeFiの限界
*総論
(続きは、d10n Labコミュニティに入会してお読みください。)
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