技術解説

Token Curated Registry(TCR)。分散的にメディアやレジストリを管理することの実現性 

本レポートでは、Token Curated Registry(以下TCR)について考えます。
TCRは、トークンを用いたゲーム理論、インセンティブ設計によって、分散的にデータレジストリ・ブラックリスト・メディアリストなどを作成できるという構想です。
この仕組みは賛否はありますが、昨年から話題になり、様々なプロジェクトがアイデアを取り入れたり、部分的に実装が進んでいます。

前提・TCRが解決しようとしている問題

分散的なデータベース、ブラックリスト等を公平なガバナンスを用いてリストをしようとすることは困難です。
例えば、優良なレストランをリストするサイトを作ったとして、誰も管理しないデータベースならば、不良店が混ざるかもしれないですし、店舗自身が自分のお店をそこに入れてランクを上げようとするかもしれません。
また、特定の法人が中央集権的に管理をする優良なレストランをリストするサイトがあったとしたら、もしかしたらその管理者は優良なレストランを選定する能力は優れているかもしれませんが、本当に公平に選定をしているのかの検証が困難なことや、一部のレストランから賄賂を受け取り、レストランをリストしているかもしれないことが疑われます。

それこそ暗号通貨・ブロックチェーンの情報も同様で、情婦価値の高い記事やレポートは少なく、それを効率的、かつ信頼できる仕組みでキュレーションをすることは今のところあまり出来ていません。

そういった問題の解決手法としてTCRというアーキテクチャが考えられています。
トークンを用いた投票モデルによるゲーム理論を使用したアーキテクチャで、これによって例えば下記のようなものを分散的に管理できると期待されています。

・Wikipedia
・ブラックandホワイトリスト
・ランキングサイト
・ニュースキュレーション
・論文の評価
etc

Token Curated Registryは、2017年後半から話題になり始めて、ConsensysのMike Goldin、James Young、Ameen Soleimaniなどが提案を始め、Mike Goldinは下記のリンクでペーパーの形にまとめています。

*Token-Curated Registries 1.0
https://docs.google.com/document/d/1BWWC__-Kmso9b7yCI_R7ysoGFIT9D_sfjH3axQsmB6E/edit

すでにいくつかのプロジェクトがTCRの採用していますが、Vitalikなどは、このTCRは過剰に騒がれているなどと指摘しており、レポートでは課題にも触れていきます。

TCRの基本的な仕組み

TCRを用いて、全米の優秀な大学をリストするサイトを作成したいとします。

TCRの基本構造として、エコシステムに存在をするプレイヤーは以下の下記です。

・リストされたいエンティティ(The Candidates)
レジストリにリストされたい人です。
レストランのランキングなら、レストラン。大学ランキングなら大学、またはそれらのステークホルダーのはずです。

・トークンのホルダー(Token Stake Holders)
それぞれのレジストリにネイティブトークンが存在し、そのトークンはレジストリがより良いレジストリになるほど恐らく価値が高いはずであり、トークンホルダーは、より良いレジストリを作成するために合理的、利己的に投票行動などを行うと期待されます。

・リストを見たい一般ユーザー(Consumers)
こちらはリストを見たいユーザーです。このユーザーに支持をされればされるほど、トークン価値は高まると期待されます。

リストされたい人は、トークンの一部をデポジットして、リストへの追加を立候補、または拒否をします。(拒否をする場合は、それがブラックリストの場合です。)
基本的にこれについて誰もが反論をしない場合は、そのままリストに追加されます。

しかし、もしその立候補に不満がある場合は、その他のトークンホルダーは、トークンを使用してそのプロポーザルを受け入れるかどうかをによって決定するガバナンスをスマートコントラクトで構築します。
投票の過半数の意見が、承認または拒否され、リストが作成されていくという仕組みです。

TCRの例、全米の優良な大学をTCRで作成する

より具体的に例を見ていきます。
全米の優良な大学をTCRで作成するとしてみましょう。順序だてて解説します。

1.前提
大学ランキングです。
優良な大学にランクをされたら大学側は評価が上がり、入学希望者なども増えます。
このリストには入りたいです。

2.大学による立候補
大学はリストされるためにトークンを購入します。
100トークンをスマートコントラクト にデポジットをして、リストに応募します。

3.トークンホルダーによる精査
トークンホルダーは、この立候補について何も異議がなければ、立候補はそのままマージされます。
しかし、異議がある場合、トークンホルダーは「チャレンジ」という行為を行えます。
「チャレンジ」には、立候補者の大学と同等量のトークン、この場合100トークンをスマートコントラクトに最初に異議を唱えた人がデポジットします。

4.トークンホルダーによるチャレンジ
ある大学が、そのリストに含まれるのは不適切であるというチャレンジがあるトークンホルダーによって行われました。
ここでその他のトークンホルダーによる、そのチャレンジを支持するかしないかの投票が行われます。
この投票の票数は、トークン保有数をベースにします。
投票期間は仮に一週間としましょう。

5.チャレンジの結果
一週間後、チャレンジの結果、コミュニティからこの大学が優良大学リストに入れるのは不適切であるとトークンホルダーの投票により判断されました。
この場合、大学がスマートコントラクトにデポジットしていたトークンは、最初にチャレンジを提案した人と、その提案を支持したトークンホルダーの間で振り分けられます。

逆に、チャンレンジの結果、コミュニティからこの大学が優良大学リストに入れるのは適切であると判断され、つまりチャンレンジは不適切であるとコミュニティが判断したとします。
この場合は、チャレンジをした人がデポジットしたトークンが、立候補した大学と、チャレンジの拒否に投票をしたトークンホルダーの間で振り分けられます。

ビジュアライズした図が下記のようになります。

(引用:https://medium.com/@simondlr/city-walls-bo-taoshi-exploring-the-power-of-token-curated-registries-588f208c17d5

以上の提案と分配を全てスマートコントラクトで実行します。

ここで、トークンホルダーは良いリストを作り、トークン価値を上げるために利己的に正しい投票行動をするはずであると期待されています。
良いリストを作るとなぜトークン価値が上がるかというと、そのリストにはより多数の立候補者や、それに投票をしたいステークホルダーも増えるはずであり、トークンを購入したい人は増えると期待されるからです。

一度レジストリにリストされている大学を削除したい場合も、同様のチャレンジを用いて、大学をレジストリから削除提案をすることもできます。

ここまでがが大まかなTCRの形式です。
TCRは、このようにゲーム理論を用いた仕組みであり、様々な形式なものが存在し、Unordered TCR、Ordered TCR、Graded TCR、Layered TCR、 Nested TCRなど自分が知る限り10種類近くのTCRのパターンが議論・提案されています。
個別に説明をすることは避けますが、こちらの記事がそれぞれの簡易的な説明として詳しいので、興味ある方はご覧ください。

*Token Curated Registry (TCR) Design Patterns
https://hackernoon.com/token-curated-registry-tcr-design-patterns-4de6d18efa15

d10n labで配信をしたレポート全文では、TCRで指摘をされている問題点を考え、また、一方で期待されている応用例の紹介、TCRを用いた個別のプロジェクト事例を見ていきます。

目次
*前提・TCRが解決しようとしている問題
*TCRの基本的な仕組み
*TCRのエコシステム内の各プレイヤーのインセンティブ
*TCRの利点
*TCRの課題
*TCRでこんなアプリケーションが作れると将来期待される応用例
*TCRを用いるプロジェクトの事例(1)
*TCRを用いるプロジェクトの事例(2)
*TCRを用いるプロジェクトの事例(3)
*総論

(続きは、d10lab研究所サロンに入会してお読みください。)

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