法・税制

寄稿レポート:なぜ仮想通貨に関わるマネロン対策が国際社会で重視されているのか〜国際金融の歴史から読み解く

d10n Labでは、こじらせ女子(https://twitter.com/icotaku_utgirl)さんの寄稿レポート「なぜ仮想通貨に関わるマネロン対策が国際社会で重視されているのか〜国際金融の歴史から読み解く」を配信しました。

こじらせさんには以前にも、東南アジア発のプロジェクトでよく見られる「リバースICO」についてレポートしていただきました。

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今回のレポートでは、既存金融における規制の歴史やFATFの沿革と仕組みに着目することで、仮想通貨に関わるマネーロンダリング・テロ資金供与対策がなぜ国際社会で重視され国際協力が急速に進んでいるのか、その意義や背景が理解できます。

大手取引所の本社登記国はFATF非加盟国に集中しているというデータ等非常に面白く、今の取引所の空気感なども読み取れる良いレポートです。

なぜ仮想通貨に関わるマネロン対策が国際社会で重視されているのか〜国際金融の歴史から読み解く

◆目次
イントロ
仮想通貨がはらむマネロンリスク
仮想通貨に関わるAML/CFTの国際的な流れ
既存金融市場におけるAML/CFTとの関わり
今後の検討事項

◆イントロ

本稿では、仮想通貨に関わるマネーロンダリング規制とテロ資金供与対策(Anti-Money Laundering/Countering the Financing of Terrorism、AML/CFT)が国際社会で重視されている理由について、国際金融の歴史から考察していきます。

AML/CFTの他にもICO規制、税制、資本流出規制など、仮想通貨を巡り規制の必要性が叫ばれている分野は数多くありますが、主要国が立場を共にして規制強化を進めている分野は唯一AML/CFTのみと言えるでしょう。

仮想通貨に関するAML/CFTは、2015年頃からG7・G20の首脳会議や財務大臣・中央銀行総裁会議で度々議題にのぼっており、AML/CFTをめぐる国際協力をを推進する国際機関・FATF(Financial Action Task Force、金融作業部会)でも、仮想通貨に関わるAML/CFTの国際基準策定が進められています。

FATFは2015年6月に仮想通貨規制に関するガイダンスを発表し、加盟国にリスクベース・アプローチに基づいた規制を求めてから、2018年6月にはそれを加盟国の義務であるスタンダード(基準)へと格上げする方向で検討を開始すると発表、さらには同年10月に、加盟国がAML/CFTのために取るべき措置として定めている「40の勧告」に、仮想通貨に関する条項が追加されました。

他の分野には見られないほどのスピードで、仮想通貨に関わるAML/CFTをめぐる国際協力が進んでいる背景には、マネーロンダリング・テロ資金供与というイシューそのものの重大さと、既存金融市場においてのAML/CFTを巡る国際協力の歴史があります。

本稿では、仮想通貨という新たな技術がもたらすリスクに対して国際社会がどう対応してきたのかを概観し、既存金融市場における国際協力の歴史を引き合いに出しながら、その重要性について考察します。

◆仮想通貨がはらむマネロンリスク

そもそもマネー・ロンダリング(資金洗浄)とは、「犯罪などで不正に得た資金について、その出所や受益者を隠蔽し、合法的な資金と偽装する操作」を指します。その主要な目的は、犯罪収益について没収・追徴や課税を免れること、また、犯罪収益を合法的資金と偽装することにより、犯罪や合法的活動への再投資を可能にすることにあります。

かつては主に、薬物犯罪、武器の密輸、人身売買、サイバー犯罪などの収益について行われていましたが、21世紀に入り、テロ組織やテロ支援国家への資金提供の際に行われていることも問題視されるようになっています。

仮想通貨が抱えるマネロンリスクが強く懸念されている理由は、匿名性とボーダーレスという、既存の決済システムには見られない仮想通貨特有の性質に起因しています。具体的には、KYCなしでウォレットアドレスを作成可能で、匿名で送金ができること、また国境を超える送金も低コスト・短時間でできる、ということです。
ただし、トランザクション記録はブロックチェーン上に記録され、誰でも閲覧できるようになっていることから、取引主体の匿名性をより一層向上させた匿名通貨が使われることもあります。

実際に、Bitcoinやその他デジタル通貨を悪用した資金洗浄を働く国際犯罪組織が登場し始めたのは2010年頃のことでした。その中でも有名なのがSilk Roadで、複数のウォレットアドレスをミックスすることで匿名性の高いBitcoin決済サービスを提供し、違法薬物・武器・盗難ID・ハッキングサービス売買などの犯罪の温床となっていました。最盛期には数十万人(そのうち1/3は米国民)にサービスを提供、数億ドル規模の資金洗浄にかかわっていたとされています。

他に、仮想通貨ではないタイプの電子マネーを用いた犯罪組織としては、米ドルにペッグされたLiberty Dollarを使い匿名性の高い決済システムを提供し、クレジットカード詐欺・ID盗難・ハッキング・麻薬の密輸入などといった犯罪の温床となっていたLiberty Reserve、WebMoneyやe-goldを利用し、盗難IDやクレジットカードの販売に関わっていたWestern Express International Inc.が存在していました。

そして、仮想通貨同士や仮想通貨と法定通貨との交換を仲介する取引所は、犯罪組織が資金洗浄を行う場となっています。特に、AML/CFT対策が不十分な取引所で、資金洗浄が横行する傾向にあります。CipherTrace社よると、2009年1月から2018年9月の間で、AML/CFTに関わる法規制が十分に整備されていない国の取引所に、不正資金の疑いがある38万以上ものBitcoinが流入しており、それはAML/CFTが適切に行われている国の取引所に送金された1万Bitcoinと比べてもはるかに多いことがわかっています。

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